株式会社の役員には任期があることをご存じでしょうか。一人会社の場合、取締役の任期が満了した後も自分が再任されるわけですが、役員を変更していないので役員変更の登記は必要ないと思っていませんか? このような場合も、任期満了により退任した役員が再び就任するということになり、役員の登記事項に変更が生じています。(登記上は「重任」といいます。)。最長の任期を超えて取締役を続けるためには取締役重任の手続きをしなければなりません。
株式会社の場合は、役員の任期満了から2週間以内に役員変更の登記をする必要があります。必要な登記を怠った代表者等は、”会社法違反”として裁判所から100万円以下の過料に処される可能性がありますので、登記申請は速やかに行わなければなりません。一人会社を続けていく以上、必要な時期に重任の手続きが必要となります。恥ずかしながら私はこの手続きを知らず数年も放置していました。慌てて法務局に行って自分で手続きを行いましたが、しばらくして裁判所から過料支払いの命令が届くこととなりました。(以下は過料決定通知の実物画像です。)
株式会社役員の任期
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会終結の時までですが、公開会社ではない株式会社の取締役及び監査役の任期は定款で定めることにより、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会終結の時まで延長することもできます(会社法第332条第2項、第336条第2項)。なお、代表取締役の地位は取締役の地位に基づくものであるため、取締役の任期が満了した場合には、代表取締役の任期も満了して退任することとなります。。
取締役重任登記の手続き (自分でやれる!)
前述の通り、株式会社の役員変更の登記は、登記の事由が発生した時から2週間以内にしなければなりません(会社法第915条第1項)。この登記すべき期間の経過後に登記申請をしたとしても、当該期間内の登記申請を怠った代表取締役は、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法第976条)。
必要書類を揃えて法務局に提出するだけなので、登記の手続きを自分で行う事は決して難しくありません。法務局のサイトから必要書類のダウンロードができますし、併せて記載例も見ることができます。わからないことは法務局に直接相談してみましょう。
- 変更登記申請書 (登録免許税として10,000円の収入印紙が必要)
- 株主総会議事録 (取締役の任期満了に伴う改選に関する決議が記載されたもの)
- 株主リスト (株式数、議決権数、議決権数の割合が記載されたもの)
変更の登記せず放置し続けた場合
役員の変更の登記等をしないまま放置し続けた場合、株式会社の場合には、最後に登記をした時から12年を経過したとき、休眠整理作業の対象となり、その後も登記又は事業を廃止しない旨の届出をしない場合には、解散したものとみなされ、登記官の職権により解散の登記がされることになりますので、注意が必要です。
全国の法務局では、毎年、休眠会社・休眠一般法人の整理作業を行っています。休眠会社を放置すると、事業を廃止し実体を失った会社がいつまでも登記上公示されたままとなるため、登記の信頼を失いかねません。また、休眠会社を売買するなどして、犯罪の手段とされかねないことといった問題があることから、平成26年度以降毎年休眠会社の整理作業を実施することになっています。毎年10月頃、法務大臣による官報公告が行われ、休眠会社又は休眠一般法人に対して、登記所から通知書が送付されます。この公告から2か月以内に役員変更等の必要な登記又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出がされないときには、実際には事業を継続していたとしても、みなし解散の登記がされることになります。この一連の手続を「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」といいます。
重任登記を忘れないようにするためには
複数の方法を組み合わせて、取締役重任登記を忘れないようにすることが重要です。
- 登記期限をカレンダーやリマインダーに登録し、チェックするようにする。
- 税理士や弁護士などの専門家に手続きを依頼し、登記期限を把握してもらう、
- Webサービスなどの自動化ツールを導入し、登記期限のアラートや手続きを自動化する。
まとめ
取締約重任登記を忘れたことにより過料を支払うことになった経験から、一人会社を経営する皆さんにこのことを知ってもらいたいという思いで記事を書きました。そもそも知らなかった、長い年月が経って忘れてしまったなど、うっかりミスが重大な事態を招くことがあります。この記事によって皆さんの認識を深まり、一人会社運営のお役に立つことを願ってます。
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